そんな膝の痛みを持つあなたの悩みに答えていきます。
ジャンパー膝の治療は、一般的には手術などをしない保存療法が多いと思います。
その保存療法で指導されることが多いのが、もも前のストレッチです。
一時的には良くなっても、その後再発を繰り返したり、痛みがよくならない人も多いかと思います。
ここで指導されるストレッチは、膝が痛い時に炎症が起きている組織を伸ばすと言うことなので、普通に考えて痛みが悪くなりそうですよね。
傷口に塩を塗るようなものです。
ジャンパー膝が重度になると、膝下の腱の部分的な断裂の状態になっているため、ストレッチは適切ではないです。
状態によっては、効果があることもあるかと思いますが、あまり適応になる例は少ないかもしれません。
なので、もも前の筋肉が硬くなる原因を改善しなければ根本的な改善にならないと思います。
というわけで、今回の記事の結論です。
・ジャンパー膝は、ストレッチでよくなることは少ない。
・できるだけ初期のうちに痛みに対して対処すること。
・膝に負担がかからないような動作の獲得をする。
それでは深堀していきましょう。
Table of Contents
いろいろな原因がある膝の痛み
スポーツをしている方の膝周りの痛み。
病院に行ってジャンパー膝と診断されている方も多いかと思います。
しかし、その症状。本当にジャンパー膝でしょうか?
そもそもジャンパー膝ってなんなのでしょうか?
ジャンパー膝とは
ジャンパー膝はジャンプ動作を繰り返す競技で多く発生する膝の障害です。
症状は徐々に進行することが多く、最終的には歩行や階段でも痛みが出て動作が困難になってきます。
ジャンパー膝以外の診断名
ジャンパー膝以外でも膝周りの診断名は多くありますので、正確な病態の把握が大切です。代表的な診断名を箇条書きにしておきます。
・膝のお皿の疲労骨折
・タナ障害(膝のお皿に負担がかかって生じる)
・オスグッド病(膝下の骨が剥離してくる)
・滑液包炎(お皿の下の滑りをよくする組織に炎症が出てくる)
膝周りが痛くなるとしても、膝下が痛くなるのか、お皿周りが痛くなるのか、それぞれ痛みが生じている原因が違う場合が多いです。いろいろな原因が複合している場合もあります。
膝だけの問題ではなく、骨盤の角度の問題、膝が内側に入る問題、足首の硬さの問題、扁平足の問題など、あげればキリがないほどいろいろな部分が作用します。
ジャンパー膝で痛みが出る場所
ジャンパー膝で痛みが出る場所は3箇所が代表的です。
①お皿の上
お皿の上にはももの前の筋肉(大腿四頭筋)がくっつきます。
②お皿の下
お皿の下には靭帯がくっつきます。
③膝下の靭帯がくっつく部分(脛骨粗面)
この部分にも靭帯がくっつきます
痛みが出る場所としては、筋肉や靭帯がくっつく場所に痛みが出やすいです。
そのため、ストレッチをしてしまうと、痛みがある場所にさらに負担をかけることになるため、悪くしてしまう可能性もあります。
ジャンパー膝に見られる損傷部位
膝下の靭帯(膝蓋腱)の表層
膝蓋腱の表面に炎症が出る状態です。
膝を曲げると痛みが出やすく、膝を曲げた状態で膝蓋腱を押すと、痛みが見られます。
膝蓋下脂肪体
膝の下には脂肪体があります。
膝を伸ばした時に関節の外に出てくるような動きをします。膝のお皿が上方に移動しにくい人や、膝が伸びきらない人などが、動きが悪くなってきます。
膝蓋腱深層部分断裂
文字通り膝蓋腱が部分的に切れてしまっている状態です。
こうなるとストレッチは適応でないことがわかると思います。
スクワットで膝が60°〜80°曲がった時に痛みが出ることが多いです。
部分的な断裂なので、治療には長い期間が必要になります。
このような状態にならないために、事前に治療をしていく必要があります。
膝が痛くなる原因
骨盤の後傾
まず、膝が痛くなる方に多いのが、骨盤が前傾しない状態(後傾)のまま動作をすることがあげられます。
骨盤の前傾に必要な要素として、腸腰筋の筋力が必要となります。
腸腰筋の筋力低下が生じると、骨盤が前傾するときに適切に骨の動きが出なくなり、足の付け根で詰まるような感覚になることがあります。
また、骨盤が後傾したままでは、後方重心となりやすく、膝にストレスがかかりやすくなります。
足首が硬い
足首が硬いと、後方重心になりやすいので、膝周りにストレスがかかります。
股関節を曲げたり、背骨を曲げてなんとか重心を前に持っていこうとしますが、膝へのストレスは強い状態となります。
目安としては、膝下の骨が、45°くらい傾くと良いとされています。
足首の返りは足の親指を曲げる筋肉に硬さがあると、足首の返りに制限が出てきます。
スクワットの時などに足の指に頼る動作になると足首の動きに制限が出てきます。
ふくらはぎの筋肉が弱い人は、足の指に頼りやすいので、足の指の筋肉に頼らないかかと上げができるようになると良いと思います。
もも裏やふくらはぎが硬い
もも裏やふくらはぎが硬いと膝を伸ばしづらくなります。
しっかりと伸びているように見えても、若干曲がっていることがあります。
膝がしっかりと伸びないと膝蓋下脂肪体が前方移動しなくなり、膝を伸ばした時に挟み込みが起こり、痛みが生じることがあります。
この挟み込みの現象が、膝下の骨の外ねじれや、大腿四頭筋の筋力低下でも起きてきます。
ももの外側の筋肉が硬い
もも前の外側が硬いと、お皿の下が浮き上がります。
お皿が浮き上がると膝蓋腱のお皿への付着部に応力が集中するようになります。
これと同じ状況が、もも前の内側(内側広筋)の筋力低下でも生じます。
また、膝のアライメントであるQ-angleが大きい人も、お皿の下の浮き上がりが大きくなりやすいと言われています。
スクワットの時に膝が内側に入る
スクワットの時に膝が内側に入る人は、もも裏の外側の筋肉ばかり使用して、スクワットを行います。
そのため、膝のお皿は外側に移動しやすくなり、お皿の下に応力が集中しやすくなります。
痛みが出た時の弊害
痛みが出ると、重心を外側に逃すように歩行をするようになります。
これは荷重がかかる位置が膝の約1cm内側を通っていることが影響していると言われています。
なので、外側に荷重を逃すことによって痛みから逃れることができます。
膝に痛みが出た時の弊害はいろいろあります。代表的な物を3つ紹介します。
・股関節の筋力が低下する
・腰痛が出る
・ももの外側の筋肉が硬くなる
詳細は割愛しますが、膝が痛くなってから上記の症状が出ている人は、歩き方の問題かもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
ジャンパー膝では、ストレッチがあまり有効でないことがお分かり頂けたと思います。
膝にいかに負担をかけないかが、重要になってきます。
股関節や足首の動きをよくして膝への負担をなるべく減らすようにしてみてください。
ももの前や股関節、ふくらはぎを鍛えることが大切です。
八木茂典 他:ジャンパー膝の分類と運動療法 2012
森戸俊行:ジャンパー膝の分類に基づく診断と治療 2012