そんなあなたの不安にお答えします!
まずは結論を箇条書きで述べます。
・女性ホルモンの影響で靭帯が緩みやすい。
・女性の骨格的な特徴、動作的な特徴により、そもそもACLを損傷しやすい。
・スポーツ中の動作では靭帯を損傷するような動作になりやすい
以上が今回の結論です。
女性は男性と比較してACL損傷の発生率が3.5倍と言われています。
ACL損傷が起きる場面としては、着地動作時や急激な切り返し動作時があります。男性では相手の足の上に着地することで、損傷することが多いですが、女性では相手にぶつかっていないのに損傷するノンコンタクトでの損傷が多いのが特徴です。
なぜ男性と比べて損傷率が高いのでしょうか。
色々な論文を調べてまとめてみました。
・女性ホルモンが靭帯に及ぼす影響
・女性の骨格的な特徴とACLに与える影響
・スポーツ中の女性の動作
Table of Contents
女性ホルモンが靭帯に及ぼす影響
エストロゲンの作用
女性ホルモンとして知られているエストロゲンは、コラーゲン繊維への影響を与えるとされています。エストロゲンの濃度が高くなると、コラーゲン繊維の代謝が減少して、繊維が細くなったり、密度が下がるとされています。
つまり、靭帯が切れやすくなると言うことができます。
しかし、悪いことばかりではなく、良い面もあります。エストロゲンは骨を強くしてくれる作用があります。
過度なダイエットや、エネルギー不足、その他様々な要因で生理が止まってしまっている方もいるかと思います。そのような状態では、エストロゲンは分泌されていない状態となっているため、骨の強度が落ちている可能性があります。
具体的な数字としてはBMIが17.5以下になると生理が止まる可能性がありますので、心あたりのある方は注意してください。
プロゲステロンの作用
エストロゲンの逆で、プロゲステロンにはコラーゲン繊維の合成を促進させる作用があるとされています。
女性の骨格的な特徴とACLに与える影響
女性のACLはもともと細い⁉︎
御遺体の解剖にて女性のACLの長さが短く、細いことがわかっています。そのため、男性の靭帯と比べると、形的に小さく、力学的に弱いことが特徴です。そもそも切れやすいということですね。
骨のねじれ(前捻角)が大きい
女性の大腿骨の前捻挫角が大きいと言われています。簡単に言うと、股関節の捻れが大きいということです。この状態でのデメリットとしては、お尻周りの筋肉に力が入りづらいということが言えます。お尻の筋肉に力が入りづらいと、膝が内側に入りやすくなり、ACL損傷をしやすくなります。
Qアングルが大きい
骨盤の形状上、どうしても男性と比べるとQアングルが大きくなりやすいです。Qアングルが大きくなると、膝が内側に入りやすい状態となるため、靭帯の損傷リスクはどうしても上がってしまいます。
体が柔らかい人が多い
体が柔らかいと言うことは、関節が動きやすいと言うことです。それはいい意味でも悪い意味でも。損傷する形の方向に動きが出易ければ、靭帯を切るリスクも出てきます。
3.スポーツ中の女性の動作
着地動作で膝の屈曲が少ない
着地の時の膝の曲がり角度を測った実験で、男性よりも女性の方が膝の曲がりが少ないことが明らかになっています。
膝の曲がりが少ないと、ももの前の筋肉(大腿四頭筋)の力が膝が安定する方向に働かず、膝下の骨(脛骨)を前方に引き出す(ACLが損傷しやすい)方向に引っ張ってしまうと言われています。
膝をしっかりと曲げることにより、大腿四頭筋の力は脛骨を後方に押し付けるような方向に働くため、ACLは保護されます。
着地動作の際の理想的な膝の曲がりは、70°〜80°と言われています。
しっかりと膝を曲げて着地をするには、もも前(大腿四頭筋)の筋力が必要ですし、着地動作の前にお腹周りの筋肉に力が入っていることも必要になってきます。
膝が内側に入りやすい
着地動作で、女性は男性よりも膝が内側に入りやすいことが証明されています。
同時に、膝下の骨(脛骨)が内捻り(内旋)しやすく、ねじれる速度も早い(急激に脛骨がねじれる)ことがわかっています。
動物の靭帯の強度を調べた実験では、急激に靭帯を伸ばした方が切れやすいと言うデータがあるそうです。強く、急激な衝撃には、靭帯は弱いということですね。
体幹機能が弱い
どうしても女性は男性と比べて、体幹機能が低い選手が多いようです。
そのため、体幹が安定しづらいため、お尻の筋力も発揮しづらかったり、体幹がぶれたりしやすい特徴があります。
これは科学的な根拠はないですが、現場での経験上の話です。
大腿四頭筋での制御となりやすい
理想的な筋肉の使い方としては、着地動作の時に、大腿四頭筋とももの裏の筋肉(ハムストリングス)が同じくらいの割合で働くと、膝が安定すると言われています。
しかし、研究では女性はハムストリングスの働きが弱いことが報告されています。
先ほども書きましたが、着地動作で膝の曲がりが足りないことと関連があるかも知れません。
まとめ
いかがでしたか?
女性が怪我をしやすい理由が少しお分かり頂けたかと思います。
対処法としては、体幹の筋トレをしたり、お尻周りの筋トレをしたり、膝が内側に入りづらくなるような動作練習を行なったりすることです。
自分では気づいていないタイミングで、膝の靭帯を損傷するリスクを抱えていることもあるため、コーチやトレーナーなどに動きを見てもらって、自分のリスクを知ることが大事かと思います。
少し本題とは離れるかも知れませんが、月経期間中の運動パフォーマンスは落ちないと研究では言われています。しかし、痛みがあったり、出血量が多く貧血気味だったり、パフォーマンスが落ちる可能性はあると、私個人的には思います。痛みは我慢せずに、適切な薬物療法を併用しながらスポーツに取り組んでいってもらいたいと思います。
それでは今回はこれで終わりにします。
・月経周期における着地時の膝関節運動の変化と前十字靭帯損傷:桜井 好美 平成24年
・診察室から考える、女性アスリートに必要な配慮t治療方針:江夏亜希子 2020
・女性アスリート向け教育プログラム開発研究プロジェクトー健康問題を解決するために:岩本紗由美 2020
・大学活動へのサポート:永野康治 2020
・女子バレーボールチームに携わる中で気をつけていること:丸毛達也 2020
・大腿骨前捻角と股関節外旋筋力の関係ー股関節回旋角度の違いによる検討:森聡 他 2010